ほおずきのランプ亭

ほおずきのランプ

 路地裏の影が濃くなり、表通りの明かりが星よりも力強い光で道を照らしている。子どもも大人も家路について、一息ついているその時間に一軒の店が現れる。
 いっそう深い闇に白くてごつごつしたレンガのかべがぼんやりと光る。一本道でその先は行き止まりだ。そのかべにはうすい青銅の板が貼られている。そのとき青銅の板の真ん中から、なにかが突き破ろうとするようにでっばりが出てきた。青銅の板はでっぱりの先のせいでやぶれ、そこからむくむくと芽が出てきた。芽はやがてつぼみをつけ、うぶげに包まれた白い花を咲かせ、ぽんっと軽い音を立てて一つの実をつけた。オレンジ色で細い筋の入ったほおずきだ。そのほおずきの中から明かりが灯され、道を淡い光で照らしている。
 その一連の動きと同時に白いレンガのかべにかかっていた『パティスリー ウィンターチェリー』という看板も姿を変えた。つるりとした白の石に店名が黒く流れるように書かれていたそれは、青銅の板からほおずきが芽生え成長するにつれて木の板に変わった。大きさはもとの看板と同じくらいだった。木の板にじわりじわりと文字がうかんできた。そこには『ほおずきのランプ亭』と書かれていた。
 ここは夜にのみ開店する、ほおずきのランプ亭。ものをつくる魔女と一人の妖精が営む魔法の店。